トランスジェンダー

彼、彼女、どっちと呼べばよい?「アバウト・レイ 16歳の決断」に学ぶトランスジェンダー

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2018年2月2日 11時11分 配信
引用元:dmenu映画

2015年にゴールデングローブ賞を受賞した米ドラマ『Transparent(トランスペアレント)』やカーダシアン一家のケイトリン・ジェンナーの性転換が注目を集めたように、生まれもった性別でセクシュアリティを判断する時代は過ぎ去りつつあります。
今回は、トランスジェンダーのティーンとその家族の葛藤と成長を描いた『アバウト・レイ 16歳の決断』から学ぶセクシュアリティについてお話したいと思います。

多様なトランスジェンダー

アバウト・レイ 16歳の決断』の主人公レイ(エル・ファニング)は16歳をもうすぐ迎えるトランスジェンダーの男の子。
身体は女の子として生まれましたが、心の性別は男の子です。
性別適合治療の一貫としてホルモン治療が受けられる16歳になるのが待ち遠しいレイ。

典型的なティーンの男の子のように、せっせと筋トレに励むレイを見守るシングルマザーのマギー(ナオミ・ワッツ)は、レイの性の移行を表向きはサポートしています。
でも、「レイが将来後悔したらどうしよう」とこっそり悩み中。
しかも、マギーの母ドリー(スーザン・サランドン)はトランスジェンダーの意味がよくわからず、しょっちゅうレイを「彼女」と呼んでマギーやレイをイラつかせます。
自分はレズビアンであるが“トランスジェンダー”に関しては鈍感なドリー……。

トランスジェンダーとは、「生まれもった性別と性自認(自分の性別をどのように意識しているか)に違和感を感じる人」の総称で、異性愛者もいれば同性愛者も、もちろんバイセクシュアルもいます。
まずは、基本的なトランスジェンダーのカテゴリーをみてみましょう。

■FTM(Female to Male)・・・
生まれた性別は女性だが、性自認は男性の人。
「トランスマン」「トランス男性」とも呼ばれる。
本作のレイがあてはまります。

■MTF(Male to Female)・・・
生まれた性別は男性だが、性自認は女性の人。
「トランスウーマン」「トランス女性」とも呼ばれる。

■トランスセクシュアル・・・
性の移行のためにホルモン治療や手術をして、身体を変えようと望む人。
トランスセクシュアルの人はすべてトランスジェンダーだが、トランスジェンダーの人がすべてトランスセクシュアルではない。

アバウト・レイ 16歳の決断』のレイはホルモン治療を望んでいることから、FTMのトランスジェンダーで、トランスセクシュアルとなります。
また、トランスジェンダーの人を「」か「彼女」で呼ぶかは、その人の性自認によるので、レイのことは「」と呼ぶべきでしょう。

ちなみに、英語版のFacebookでは性別を設定できるカテゴリーが50種類以上もあるそう。
数年前にジョニー・デップの娘、リリー=ローズ・デップが自分のことを「セクシュアル・フルイド(流動的な性)」と発言して話題になりました。
性自認が男性や女性といった規定の性別から自由な人、 ときによって性自認が変わる人(セクシュアル・フルイド)もいます。
本来、複雑な性をカテゴライズすること自体に無理があるのかもしれませんね。

「トランスジェンダー=同性愛」は間違い

作中、レイの祖母でレズビアンのドリーはレイのホルモン治療に反対し、マギーを悩ませます。
女の子のままレズビアンでいればいいじゃない」と主張しますが、レズビアンやゲイ、バイセクシュアルは「性的指向(恋愛や性愛の対象)」を示す言葉であって、レイが同性愛者とは限りません。

同性愛者だからといって、性転換することに賛成するとは限らないわ。同性愛者は性愛的指向のことで、トランスジェンダーはアイデンティティに関することだから全く別物なのよ」とドリー役のスーザン・サランドンが語ったように、トランスジェンダーとは「誰を愛するか」ではなく、「自分が何者なのか」を指す言葉なのです。

トランスジェンダーを表現する言葉は常に変化している現代。
セクシュアリティは言葉で語りきれないものかもしれませんが、言葉がなくては理解を深めることもできません。
だからこそ、私たちをとりまく“今のトランスジェンダー”を語る上で、『アバウト・レイ 16歳の決断』は大切な作品でしょう。

【出典】

明石書店 「LGBTQってなに?――セクシュアル・マイノリティのためのハンドブック」ケリー・ヒューゲル著

(文・此花さくや)

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