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東ちづる独白、LGBT映画を作った理由「生産性という言葉に引っ張られてはダメ」

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2018年12月21日 16時05分 配信
引用元:AERA dot.

女優として活躍する傍らで、骨髄バンクや障がい者アートなどの支援活動を続けてきた東ちづるさん。
テレビに出ながら、ずっと一人で取り組んできたが、東日本大震災をきっかけに一般社団法人「Get in touch!」を立ち上げた。
そして今は、自身がプロデュースした映画「私はワタシ ~over the rainbow~」の配給に奔走する。
同作にはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、そしてその枠に囚われないすべてのセクシュアルマイノリティー(LGBTs)の当事者50人が出演し、90分間のドキュメンタリー映像には50通りの「当たり前」が描かれている。

東さんの口から出てくる言葉ははつらつとしていて、よどみない。
26年前から社会問題に向き合い、考えてきたからこそ、力強く、そしてピュアだ。
お嫁さんにしたい女優ナンバー1」と呼ばれてきたが、その半面、声を上げれば「怖い」と言われ、「男性が言えば聞いてもらえたんだろうな」と悔しい思いもした。
それでも、すべての人が自然に、気楽に、自由に暮らせる「まぜこぜ」の社会を目指す東さんを突き動かしてきたのは、社会へのモヤモヤと目の前の世界への好奇心だった。

――個人でも長く活動されてきて、2011年から「Get in touch!」をスタートしました。

東日本大震災で被災地が日本の縮図だと感じました。
」「つながる」という言葉がたくさん出たけど、現実はやっぱり難しい面もあった。
自閉症の男の子がパニックになると怒られたり、耳が聞こえない方はアナウンスが分からず食事がもらえなかったり。
支援団体はたくさんあって、みんな同じ思いで活動しています。
でも、縦割りになりがちです。
内輪でぐるぐる回っている感じもあったので、そこに横串を刺したいなと思いました。
NPOも企業も政治家も手をつなぐことができればという思いがあります。
私はエンターテインメントの業界にいるので、無関心な人も「カッコいいね」「面白そうだね」と参加したくなるような、キュートでスタイリッシュな演出をしていこうと団体を立ち上げました。

本当はずっと一人で活動するつもりでした。
幼い頃から「他人に迷惑をかけてはいけない」と育てられてきたので、団体というものが苦手なんです。
集団で求められる役割に疲れることもあるし、仕事ならまだしも、やりたくてやっていることでしがらみを持ちたくなかった。
どこにも所属しないし、団体を作ることもない」と豪語していました。
やっとやる気になったか」と言ってくれた人もいたけど、一部の人には「あんなに言ってたのに」と驚かれたり。
だってしょうがないじゃん!」という気持ちですね。

――それだけ3.11の衝撃が大きかったということですよね。あらゆる社会問題に取り組まれる中で、どうしてLGBTsのドキュメンタリーの制作を選んだんですか。

十数年前、オランダで同性カップルの結婚式に参列する機会がありました。
その時、お役所の人が「あなたたちが誓約書にサインするテーブルの脚は丸や四角、台形などさまざまです。私たちも同じで、互いに違いながらも一つの社会を作っています」とスピーチしました。
式には赤ちゃんから高齢者までいて、みんなが祝福している。
これの何がいけないんだろう?」と思いました。
幸せな人、頑張っている人を国や権力で否定するのは変だとモヤモヤしたんです。

しばらくして、HIVの勉強会でゲイ雑誌「Badi」創刊元編集長の長谷川博史さんにお会いしました。
長谷川さんはゲイカルチャーをけん引してきた人で、カリスマのような方です。
ご自身のHIVを公表し、講演や詩の朗読活動を続けています。
彼の本や写真集をめくったらとても強烈で、漠然と「この人を残さなきゃ」と思って、またモヤモヤ。
そこから1年後くらいにトランスジェンダーとゲイ、パンセクシュアルの友人とLGBTsの映画を観たとき、「素敵だったけど、登場人物のストーリーであって私たちへの理解を深める作品ってないよね」「ちづる姉さん作ってよ」と言われたんです。

――それで、「よし作るぞ!」となったんですか。

無理です!って即答しました。
作ったこともないし、そんなことできないって。
でも、そこからまたモヤモヤし始めた。私はデビューが報道番組でドキュメンタリーにも関わってきました。
本当にできないかな?ドキュメンタリーならできるかも」と思って、「映画撮りまーす!」って宣言しました。

――実際に撮影して、いかがでしたか。

この映画は3年かけて撮ったんですけど、半年くらい経ったときに「まずい、面白くないぞ」と焦りが生まれました。
なりたい私になりたい」「自分らしく生きていきたい」といったことを皆さんお話するんですけど、これは当たり前のことですよね。
みんな「私はワタシ」だし、なりたい自分になりたいでしょう。
フラットにLGBTsのことをとらえているつもりだったけど、「LGBTsは特別なことだ」という思い込みがあったことに気付きました。
でも、「聞いても分からないな」ではなくて共感できるなら、大丈夫だなとも思いました。
映画を観て「僕はゲイだけど、みんな全然違ってびっくりした」と話す出演者の方や「トランスジェンダーのことはよく知らなかった」と驚くレズビアンの方もいました。
それは当然のことで、みんな自分のことで精いっぱい。
自分の規格で考えていた」と気付いた方も多いようです。

実は、監督の増田玄樹さんはLGBTsのことを全く知らなくて、テレビ業界の専門用語だと思っていたとか。
ドキュメンタリーを撮りたい」と相談したら即答でOKしてくれたのに、ですよ。
途中で気付いたけど怖くて私には言い出せないから、こっそりインタビュー相手に相談したそうです。
実は何も分かっていない。何から勉強すればいいですか」と聞いたら、「知らないならそのまま撮って。ほとんどの人が知らないんだから」と言われたんですって。
後で聞かされてびっくりして、爆笑しました。

――LGBTsの関心が高まる一方で、そっとしておいてほしいと感じている方もいますよね。そこの葛藤はありませんでしたか。

ないですね。
東さんがLGBTsと発言するたびに分断される」と言われることもあって、その通りなんです。
そもそもカテゴライズする必要もないし、LGBTsという言葉がいずれはなくなればいいと思っています。
でも、今の日本には便宜上必要です。
言葉が広まり、理解が深まる一方で誤解や偏見で「絶対に認めない」「生産性がない」という人との分断は大きいです。

生産性がなければ人として価値がない」という考えは世代連鎖だと感じています。
頑張らなければいけない」「役に立たなければいけない」という刷り込みが強いから、とても生きづらくなってしまった。
杉田水脈議員の「LGBTは生産性がない」という発言は、子孫繁栄という意味での生産性を達成していて、そこを頑張ったから認めてほしいのだと思います。
でも、生産性という言葉に引っ張られてはいけなかった。
本来は個が大切にされなければいけないのに、社会の役に立つか立たないかで議論が進んだことがとても恐ろしいです。
戦後の優性思想に通ずると思います。

――映画館での上映はポレポレ東中野(12月22日~28日)が決まり、すでに試写や上映会で観た方からの反響もあります。不安はなかったですか。

出演者、LGBTsの皆様の反応が一番怖かったですね。
LGBTsの団体でないのにどうして作るんだ」と疑問視していた当事者の方からも「良かった」と言ってもらえて、ホッとしました。
モヤモヤしないLGBTsの映画を初めて見た」という言葉も嬉しかったです。
説教臭い映画にはしたくないし、誰かのせいにするのではなく、見た人が考えられる映画にしたいと思って社会批判や政治批判の言葉はカットしました。

この映画は追撮、再編集して、希望する小中高に無償配布もします。
2年前に文部科学省から学校でLGBTsに配慮するよう通達がありましたが、どうすればいいか分からず現場の先生も困惑しているそうです。
当事者の声をつむいだドキュメンタリーが勘違いや偏見を取り払って、何かを考えるきっかけになればと思っています。

――タレントの方が社会的な活動をすることを批判する人もいます。

それはすごく感じています。
ファンだったのにこういう活動をしていてがっかりした」と言われたこともあります。
でも、「どんどん発信してください」「日本の芸能人は台本でしか話せないと思われているけど、本当はそんなことない」と言ってくれた人もいました。
SNSが発達しているので、風向きは少しずつ変わっているのかなとも思っています。

私は28歳で東京に来たので制約される時期がありませんでした。
もう少し若い頃に芸能界に入っていれば、イメージ作りをしてもらえたのかもしれないけど、野放しでここまできちゃったんです。
それに、スタートが報道番組だったので、自分の言葉を持つ重要性を学んできました。
ただ、昔アシスタントのお仕事で「フリップを持ってニコニコしていてください」と言われたときは驚きましたね。
今でも、「男の人が同じことを言えばもう少し聞いてもらえるんだろうな」と思うことはあります。

――発言の本質以外で見られてしまう、と。

何かを発言したとき「強いですね」「怖いですね」と言われることがあります。
でも、強いことも怖いことも言っていないんです。
日本ではどうしても「若い、可愛い、美しい」で女性を評価する傾向にあります。
キャリアを重ねることは面倒臭い人になっていくと思っているみたいです。
もちろん寛容な人もいるし、このことを真剣に考えている人もいるから、まだ芸能界で生きていけるんですけどね。

――その一方で「若い、可愛いから許されている」と言う人もいます。

そういう言葉もたくさんありますよね。
でも、若い人はキャリアも知識も経験もないから、どんどん許されていいと思いますよ。
トライ&エラーを繰り返して学んでいく。そうしないと成長できません。
それに、若かろうが年を重ねていようが、許されることは許されたほうがいいんです。
もう失敗できない年だもんね」なんて言われてしまったら、一生トライできなくなってしまいます。
失敗を受け止めて、一緒に考えてくれる環境があるといいですよね。
今は誰かが失敗すると「次のターゲットはこの人だ」とフルボッコにしても良いという空気があるように感じていて、とても怖いです。
世の中から「」がなくなっている気がします。
何か問題や失敗が起きたときは、みんなで考えるチャンスなんです。
表層や上辺だけを見ていると何もできなくなってしまいます。

今、「SDGs」がよく取り上げられています。
これはジェンダーや教育、貧困といった17の目標を世界で2030年までに達成しようという取り組みです。
日本も積極的に動いていますが、SDGsシンポジウムの現場に肝心の手話通訳がいなかったりと混沌としています。
でも、悪気があるわけじゃなくて知らないだけ。
そこを批判するのではなく、「この人を呼んだほうがいいですよ」「寝たきりで来れない人もいるからSNSライブで流しましょう」と誰かが提案すればいいだけなんです。
トライして、皆で間違ったら考えればいいんです。

――今回の映画は東さんの「トライ」ですか。

LGBTsの映画ってお客さんがあまり入らないそうです。
自分とは無関係だと思うのと、観に行くことでセクシャリティを知られてしまうという不安もあるのだと思います。
映画がやっとできたと思ったら、次は配給の壁がありました。
なので、ポレポレ東中野さんが「うちでやりましょう」と言ってくれたことがとても嬉しかったですね。
上映するにあたって、映画冒頭のセクシャリティやジェンダーを説明するアニメーションは取るように依頼されました。
これは優等生すぎて、啓発になっている。ポレポレに来るお客さんには必要ない」と。
フライヤーも違うものを作るように言われて、色んなことを教えてもらいました。

――ミニシアターの中でもドキュメンタリーや新人作家の作品を積極的に上映する映画館ですね。

私も大好きな映画館です。
実は、上映会が一度決まったけれど、立ち消えてしまった場所もあります。
この地域はLGBTsへの理解が深くないので、まだ早すぎる」と。
コントのような話ですが、本当にあるんです。
ある議員さんはこの映画を発信しようとしたけれど、「次の選挙で票が減るから今はやめて」と賛同者の方に言われたそうです。
当選すればきっとLGBTsのことに取り組んでくださるだろうから、「まずは力を持つことを優先してください!」と伝えました。
けもの道でも道があるなら進みましょう」「道がなければ作りましょう」という気持ちです。
本当に、色んなことが見えてきて面白いですよ。
まだまだここからですね。

私はワタシ ~over the rainbow~

2018年12月22日~28日までポレポレ東中野(東京都・中野区)にて上映

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